はじめに
20世紀前半、アメリカのミューズと謳われた女優がいます。
それがルイズ・ブルックスです。欧米では今日でもBrookisieと呼ばれる熱心な
ファンたちが存在し、各々のサイトでこれでもかというほど多くの画像や資料
を提供してくれています。
わが国でもブルックス全盛時代の1920年代後半からクララ・ボウとともに
もっとも尖端的な女優として知られ、そのショート・ボブの髪型を模倣するモ
ダンガールが続出しました。下って1980年代には「ブルックシャン」を自認
する大岡昇平の「ルイズ・ブルックスとルル」(1984)が引きがねとなって、
(また欧米で1950年代から再評価が始まっていたことも手伝って)代表作の
上演などリヴァイバル・ブームを呼びました。日本に於けるBrookisieではほかに、
筒井康隆氏、山口昌男氏がよく知られています。
そのブルックスの代表作は、なんといってもG.B.パプスト監督の「パンドラ
の箱」(1928)と「淪落の女の日記」(1929)でしょう。いずれもハリウッドではなく
ドイツの映画会社の制作で、社会派監督パプストの監督による作品であるところが、
フラッパァでありながら時代に酷薄で鋭い視線を送っていた《アメリカのミューズ》
らしい皮肉です。
わが国では「パンドラの箱」と「淪落の女の日記」がドイツ文化センターなどで
時おり上映される以外は「パンドラの箱」がビデオ発売されているに過ぎません。
彼女のフラッパァな魅力を伝える作品群は残念ながら高価な輸入ビデオでしか見られ
ないという、21世紀らしからぬ驚くべき不便さです。
ブルックスについて調べようと思っても、前述のように欧米には幾つものサイトがあ
るのに、日本には纏まったものが一つもありません。
そこで、非力ながらBrookisieの端くれとしてこのサイトを立ち上げました。
ここでは、無邪気とお色気が混沌と混ざり合った不思議な魅力をもったブルックス
を、写真と文で紹介したいと思います。
そうして、ひとりでも沢山のBrookisieが生まれることを願ってやみません。
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